Really Saying Something

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「本棚の10冊で自分を表現する」

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」

お題分としてまず1冊。

帰って来た桃尻娘橋本治

帰って来た桃尻娘 (講談社文庫)

帰って来た桃尻娘 (講談社文庫)

シリーズとしては「桃尻娘」「その後の仁義なき桃尻娘」「帰って来た桃尻娘(←これ)」「無花果少年と瓜売小僧」「無花果少年と桃尻娘」「雨の温州蜜柑姫」の6冊ありますが、人生に強く影響を与えたのはこれでした。

大学に入って最初の心理学(一般教養)の授業*1で、教授が「君たちが一般的に思い描く心理学と大学で学ぶ心理学は違う、特にここの心理学はこの本を読めばよく分かるので、興味があるならまずこの本を読んでくれ」(大意)と言いました。ちょうど当時は臨床心理学がちょっとしたブームになっており、私も例に漏れず心理学とはそのようなものだという気持ちでいたのです。

「帰って来た桃尻娘」の主人公である榊原玲奈は、1年の浪人生活を経て早稲田大学第一文学部に入学します。心理学を学ぼうとしたのに、猿のものの見え方などに関する講義を聞いてがっかりしてしまいます*2。そこで、自分が考えていた心理学と、大学で学ぶ心理学はかなり違うということを知るのですが*3、見事にその教授が言っていた通り、自分の大学でも知覚心理学認知心理学、行動心理学が主な研究範囲だったのでした。

結局その授業を取ることにして、自然科学としての心理学のさわりを学べたのはかなり面白かったです。それと同時に、心理学を専攻することに対してそこまで執着が強くないことにも気づき、全然違う分野を専攻しました。ついでに小説がおもしろかったので、シリーズ6冊を買い集めて読破もしました。最終巻「雨の温州蜜柑姫」も次いで影響を与えるくらいだったのですが、実際に自分の行動に作用した方を。

動物のお医者さん佐々木倫子

コミックスは全12巻、文庫版が全8巻。とにかく面白かった。高校時代を直撃したので、舞台であるH大のモデルとされる北海道大学の倍率がちょっと上がった時期を知っています。アカデミックなもの・ことに対する憧れはこの漫画で生まれたかもしれない。コンタミとかオートクレーブとか理系じゃないとなかなか知らない言葉にも親しめました*4。部活のときに新刊を入手した人が交互に回し読みしていて、あまりにみんなで漫画を見て笑ってばかりいるので、部内で苦言が呈されたこともありました。でも「漂流教室」とかも出回ってたんだぞ。

こゝろ夏目漱石

高校の現代文の授業でやったような気がします(現代文……?と思うけど古典じゃないしなー)。近代知識人のエゴイズムを描くとかなんとかの文学的意義とは全く関係ないところで、教科書で切り取られた一部が非常に面白く、自分で文庫本を買って読みました。時系列が手紙で入れ替わるのでちょっとしたミステリーっぽい。同性愛の関係として読み解いたブログ記事があって、私が思ったこととかなり近かったのですが、記事は消えていました。残念。教科書で取り上げられた夏目漱石作品はほかに「それから」があったのですが、圧倒的にこゝろの方が面白かったし、高校時代まで食わず嫌いだった夏目漱石を読むきっかけになったということで。

山月記中島敦

これも高校でやりました。確か高校1年生で、「狷介」「甘んずるを潔しとしなかった」などなど、中学生までの語彙になかった、少なくとも初読が授業であったために私がそれまで知らなかった言葉に出会い、古典(漢文)の授業が面白かったこともあって、とにかく新鮮で何度も読んだのを覚えています。文体のリズムが好きだという気持ちも初めて知ったように思います。これ本棚にないけど青空文庫で読めるから入れちゃおう。

きらきらひかる江國香織

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

江國香織的なるもの」があまり好きではなかったのに、これだけはなぜか忘れもしない、藤沢の有隣堂の4階(当時)の新潮文庫コーナーで何度も何度も何度も立ち読みをして*5、もう全部読んでるじゃん!という状況になって、これはやっぱり手元に置こう、と思って買いました。自分の中にある「江國香織的なるもの」の存在を許容した瞬間でした。それからやっとぽつぽつ買ったり読んだりし始めた気がします。

N・P(吉本ばなな

N・P (角川文庫)

N・P (角川文庫)

当時はまだ漢字だったので「吉本」表記で。吉本ばななの書くものはなぜか私の中で両極端で、ものすごく好きか、興味が湧かず読み進められないか、のどちらかです。「N・P」は前者で、単行本の時点で買って何度も何度も読み返しました。たぶん本の中の描写を脳内で想像できるかできないかが分かれ目なんだろうなーと思います。「N・P」の夏の光や夜の海辺なんかはまるで自分に起きたことのような手応えで、単行本を実家に置いてきてしまったにもかかわらずどうしても読み返したくなって文庫で買い直しました。そういえばこの本が好きな理由の一つにアカデミックさがあります。やっぱり好きなんだろうな。

双頭の悪魔(有栖川有栖

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

自分がまさかミステリーを読むとは思わなかったし、シリーズ丸ごとはまるとは思いませんでした。有栖川有栖の学生アリスシリーズと作家アリスシリーズ一応どちらも手を付けて、一般的には作家アリスの方の火村さんが人気あるのはわかってはいるけれど、私は江神さんの方が好きすぎて学生アリスばっかり読み返すようになってしまいました。そう、登場人物に対して恋に落ちたといっても過言ではないくらい、「双頭の悪魔」の江神さんにはとにかく幸せになってほしいし死なないでほしいのです。江神さんの年齢(たぶん26……?)を追い越してなお江神さんは先輩です*6

ハルカ・エイティ(姫野カオルコ

ハルカ・エイティ

ハルカ・エイティ

ずっとエッセイストとして好きだった姫野カオルコさんの小説では、実は「空に住む飛行機」(現タイトル「ドールハウス」)が一番好きで、たまたま本屋さんで手にとって読んだらその場でめっちゃ泣けてきて、あわてて買って帰って家でずっと泣きながら読んでいまして、自分を表現するなら「空に住む飛行機」の方が適切なのではないかと思ったのですが、大阪に引っ越した後に中之島の図書館に1人で出かけていって、中之島まで行くだけでも当時の自分には大冒険で*7、その図書館で大阪にゆかりのある本のコーナーがあって「ハルカ・エイティ」を見つけて、梨木香歩さんの小説と一緒に借りて帰って、読んでみたらものすごく明るくて前向きでハルカみたいなおばあちゃんになりたいなあ、と思った、という私の中だけで一大エピソードがあったので入れました。書いてみたけど説明しきれないよ!でもこの本の存在がエポックメイキングだったんだよ!

ガセネッタ&シモネッタ(米原万里

ガセネッタ&(と)シモネッタ (文春文庫)

ガセネッタ&(と)シモネッタ (文春文庫)

自分の病気をきっかけに米原万里さんの著書を知り、既にその時点では米原さんは鬼籍に入られていて、お名前だけ知っていたけどロシア語通訳やエッセイストとして大活躍されていたことは全く知らなかった……というわけで少しずつ買って読みました。「打ちのめされるようなすごい本」とどっちか、という感じでしたが、通訳や同時通訳の恐ろしさ、ものすごさを知ったという意味で「ガセネッタ&シモネッタ」を。言葉の手応えの硬質さと内容とのバランスがとても好きです。

愛の両がわ(篠田顕子

奇しくも米原万里さんと同じ通訳を職業とされている方のエッセイ、というか自叙伝。手元に大事にとっておいてあるけど、ここまでの9冊と違って何度も読み返してはいないのが不思議。ずっしりとした人生、しかも主に苦悩や試行錯誤が描かれているせいか、ある程度覚悟して読まないといけないような気がするのです。とはいえ、結婚・離婚と職業選択、30代半ばを過ぎての挑戦など、勇気づけられる内容なのですが。「ハルカ・エイティ」と同じく大阪に行った頃、ちょうど一度職を離れていた時期に、情報番組「ちちんぷいぷい」で篠田顕子さんのことを紹介していて、軽い気持ちで興味を持って著書を読んでみようかな、と思ったらなんかすごかった!という思い出の本です。また読み返そう。



一生懸命考えていたら、自分にかなり影響を与えた本である「そして、星へ行く船」(新井素子)が抜けてしまいました。でも現時点での「10冊で表現」だとするとこれかなー。もっと思い返せば出てきそうだけど思い出せないなら表現できてないってことでひとつ。

*1:お試し受講的な何かだったと思うけどあんまりよく覚えていない。

*2:手元に本がない状態で書いてるので微妙に違うかも。

*3:文系の学部で「臨床心理学」を学べるところは当時かなり少なかったと記憶しています。広島大学にあったような気がする。今の情勢はわかりません。

*4:役立つのかどうかわからないけど意外に世の中ではよく見かけたので。

*5:本をぽんぽん買えるほどの経済状況ではなかったので、吟味してから買うくせがありました。とはいえ結構いろいろ買ってたけど……。

*6:スラムダンクにおける赤木先輩と同ジャンル。

*7:とにかく道に迷いまくっていたしガチで迷子になったこともあります。