Really Saying Something

雑文系ブログです。

神崎川

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エモい記事が連続しますがご容赦ください。

大阪に引っ越したばかりの頃、寒い時期にPCにばかり向かっていて運動といえば近所のスーパーへの行き帰りのみだったせいか、生まれて初めて腰を痛めた。インターネットで近所の整形外科を探し、ロキソニンテープをもらい、腰痛体操のパンフレットを眺めた。

引っ越す直前まで東京の整骨院に通っていて、その先生は私とのふとした会話から私の問題点を即座に見抜き、運動と入浴を勧めてくれた(そこから今に至るまでどちらも苦手)。大阪に行くことを告げてから何回かの施術の後、「これで合格証書と言ってもいいでしょう」と送り出してくれた。

ああいう整骨院があればいいのにな、と思えども、土地勘はなく、知り合いもいない。一から開拓するには、当時の私は少しガッツが足りなかった。何しろ大人になったというのに梅田の地下街で本格的な迷子になるという経験をしたし。ついでに、というわけではないけど働いておらず、毎日の晩ごはんを作ることに追い詰められていた。腰が痛いことよりも晩ごはんを作れないことの方がつらかった。献立を考えてスーパーに行って何も作れずに泣いて謝る、とかしてたけど今これ書いてみたら完全にやばい人だったな……。

それはさておき、腰は痛かったので、これまたネットで整骨院を探した。割とあちこちにあるけど決め手に欠ける。いいのか悪いのかまったく分からない。サイトが見やすい、くらいの要因で、電話で予約して出かけていった。そういえば電話の相手から大阪弁が飛び出してくるのも少し怖い時期があった。

簡単に経緯を説明し、あちこちほぐしてもらいながら世間話をする。私はこの施術中の世間話というやつが非常に苦手で、単なる人見知りで話したくないとか美容院で話しかけられるのがつらいとかとはまったく別に、変なタイミングで息が抜けたり力が入ったりした状態で返答を考えて発声するのがどうにも難しいのだった。無言でいればいいのだけどそれができたら苦労はしない。

何のきっかけだったか、もうすっかり忘れてしまったけど、ややおしゃべり好きなその先生が、「ときどき神崎川にでも行ってぼーっとしてるといいと思いますよ」と言った。不意打ちで何と答えればよいかわからず、「実はぼーっとするのが苦手なんです」のようなことを返した記憶がある。「何もしないでただ川を見てるだけでいいじゃないですか」「ずっと座ってるとかいいですよ」という内容のことを言われ、なんだか素直に、そうだなぁ神崎川にでも行くか、と思った。

神崎川は当時住んでいた場所の近くの川で、時間帯によっては大学のカヌー部がせっせと練習していたりする。JR京都線の橋桁が見える。でもそんなに、例えば京都の鴨川のようなにぎわいは全然なくて、近所の人が犬を散歩させていたり、ジョギングする人がいたりするくらいだ。2回くらいぼーっとしに行った。とはいってもぼーっとするのは案外難しく、真面目に橋桁に近寄ってみたり、どこまで歩けるか試したりしてしまうのだった。

それがよかったのか、単に時期を過ぎたのか、腰の痛みは消えて、整骨院に行くこともなくなった。その半年後くらいに再就職して、引っ越しもして、首と肩をだめにしたときに当時の同僚に紹介してもらった別の場所の整骨院で劇的によくなったことがあった。

それでもなんとなく「神崎川にでも行ってぼーっとすればよい」と、あのタイミングで、私に向かって言ってくれたあの先生のことをふと思い出す。もう顔も分からないのに。そしてついでに、JR京都線から神崎川を見ることがあると、あのあたりでぼーっとしようとしていたなぁ、と懐かしく思い出す。

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