Really Saying Something

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あまくなる傘

今週のお題「あまいもの」

私が生まれ育った神奈川県には「横入り」「~べ」「~だべ」「~じゃん」などの方言がある。SMAPの中居くんのしゃべり方が結構近い。ちょっと極端だけどあんな感じ。Wikipediaに項目もある(ただし記述中の1/3くらいしか私は使ったことがない)。

それとは別に、両親が青森県生まれ青森県育ちだ。知らず知らずのうちに津軽弁(南部弁とは違うようですが私には区別がつかない)が生活の中に入り込んでいる。神奈川の方言については「えっこれ標準語じゃないの」と思うことがたびたびあるが、青森の言葉についてはさらに複雑で「えっこれ標準語じゃないの、さらに神奈川の言葉ですらないの」という反応になることがしばしばあった。

さすがに両親が津軽弁話者とはいっても、生活すべてが津軽弁なわけもなく(さらに父親はなぜかわからないけどあまり津軽弁を使わなかった)、上記ページにある言葉を全部理解できるわけではない。でも親戚との会話や電話などで「せば(それじゃあ(別れの言葉))」「したはんで(だから)」「せばまね(したらダメ)」「なもまね(全然ダメ)」「わいは(驚いた時の感嘆詞)」あたりは脳内で翻訳することなく意味がとれる。この辺は津軽弁だなーと思えるけど、「きさわり(気にさわる・気分が悪い)」「かちゃくちゃね(ごちゃごちゃしていていらいらする)」「ふむしる(むしりとる)」あたりはだいぶ大きくなってから津軽弁だと知った。

ここまでが長い長い前置きである。

小さい頃、長傘を地面に突いて(杖やストックのように)歩くと、母親から「傘があまくなるからやめなさい」と怒られた。なにぶん子供なので振り回したりチャンバラのようにして遊んだりする。そのときは普通に「危ない」と怒られるだけだった。傘を地面に突く行動のときだけ「あまくなるから」という別の理由になるのだ。

私は「あまくなる」を、「傘のあちこちに衝撃が伝わって骨組みや張ってある糸などがゆるみ、壊れやすくなる」ことだと思っていた。突いたせいかはわからないが、実際にそのような壊れ方をした傘もあった。何度も注意されたおかげで、傘で遊んだり、危ない持ち方をしたりすることはなくなった。その中に「あまくなるから地面に突いたりしない」ということも含まれている。

大人になってふと、「あまくなる」があまり使われていないことに気づいた。この「あまくなる」、少なくとも神奈川の方言について語られるときには出てきたのを見たことがない。私にとって標準語ではないけど使う言葉=津軽弁、かと思ったけど違う(おそらく)。モバイル端末や時計やヘッドホンのようなガジェットに使うのではなく、もっと単純な仕組みで動く物体について、衝撃を与えてはいけないというニュアンス。例えばがま口を何度も開け閉めしていたら「あまくなる」。

私は確か一度この言葉を辞書で引いた覚えがある。そして答えはそこになかった気がする。おそるおそる「傘 あまくなる」など、いくつか組み合わせを変えて検索してみた。傘の用例はなかった。しょうがなく「甘い」で検索してみたら、私がずっと探し求めていた答えがそこにあった。

物事の機能が本来あるべき状態より衰えているさま。「このナイフの切れ味は少し―・い」「ねじが―・くなる」

これ!たぶん!……と思ったけど、衰えるはちょっと言い過ぎような気がする。「切れ味が甘い」は反対の言葉として「切れ味が鋭い」があるが。「傘が甘くなる」の反対で「傘が鋭い」なんてことは言わない。もうちょっと微妙に、徐々に壊れやすくなっていくさまに対して使うような気がしたんだけども……。「ねじが甘くなる」はまあまあ近い。

一応、自分の感覚にかなり近いニュアンスを「甘い」という言葉が持っていたことはわかった。しかし「傘が甘くなる」という使われ方が、少なくともGoogleの検索結果にはなかった。傘に対しては使われないのだろうか。せっかく長年謎だと思ってきたものがわかったのに、なんとなくこう、かゆいところに全然手が届かない感じ。傘が甘くなる(甘い、と言いきりではなく「徐々に」なる感じ)って言わないんだろうか。だとしたらどこの由来なんだろうか。せっかくわかったのにまったくわからない。