Really Saying Something

雑文系ブログです。

好きな食べ物はなんですか?

「好きな食べ物はなんですか?」「………………うーん……なんだろう……うまいこと答えられないですね……」「うまいこと答えなくてもいいんですよ!」

というのは、今日美容師さんとの間で実際に行われた会話である。話の流れでたまたま聞かれた。本当に困って答えに詰まってしまい、困っている間に髪を乾かす人が交代したので結局答えずじまいになった。申し訳ない。
(長いこと通っている美容院で見知った美容師さんが多いため、会話が苦痛だという話ではないです。念のため)(もともとは過剰な美容師さんとの会話は苦手なたちです)

イタリアン、和食などのジャンルなのか。ハンバーグとかグラタンとか親子丼とかの料理名なのか。あじとか鱈とかいくらとかの食材なのか。食材でいえばじゃがいも(ブログ作ったくらいだし)は簡単に答えられる回答の1つではあるけれど、素直に「じゃがいもが好きです」と答えて素直に「あ、そうなんですか、じゃがいもおいしいですよね」という会話になるわけがない。「えっじゃがいもですか」と聞き返されるのは目に見えている。ごく一般的に、比較的会う頻度が低い相手との間に会話を続けようという雰囲気もしくは意思が続く限り、じゃがいもと答えるのは得策ではない。

だいたい無難な回答として口にするのは「魚介類はたいていなんでも好きです」である。どうだこのカバー力の高さ。ジャンルでも料理名でも展開可能だし食材レベルでも好きの度合いを話せる。そして大事なのは嘘ではないことだ(本当にたいてい好きで、食べたことのないものだけ悩む感じ)。その後に自分にとってつらいことが起きる可能性が少ない。

「イタリアンが好きです」には嘘が混じる。イタリアンのお店できっちり行ったことあると言えるのなんてサイゼリヤくらいだけど、「ミラノ風ドリアが好き」が本当にイタリアンが好きだということにはならないと思う(そもそもサイゼリヤを挙げる時点でイタリアンではないと思うが)。だいたいミラノ風ってなんだよ。おいしいからいいけど。「和食が好きです」にはもっと嘘が混じる。何しろ納豆が食べられないので和定食の類いはかなりアウトだし、もっとお高い感じのお店に行くと「おいしいと言えないけど食べられるもの」も小鉢で入ってきたりする(それより高いところは知らん)。そもそもおいしいすき焼きのお店に行ったとしても、生卵が食べられないこととの葛藤が始まるのだ。1軒だけ生卵にくぐらせたらおいしかったっていうところあったけど。料理名レベルになるともっと大変である。グラタンやドリアのあたりはだいたい外さないけど、半熟卵やポーチドエッグが好きではないので乗ってこられたらアウト。半熟卵による料理汚染の被害は深刻で、ハンバーグだろうとサラダだろうと丼ものであろうと素知らぬ顔をして半熟卵が一緒にやってくるので、途端にそれらは「好きではないもの」に変貌する。うっかり「グラタンが好きです」と答えた相手が「グラタン好きって言ってたから」と半熟卵が乗ったグラタンがおいしいお店に連れていってくれたとしたら?相手の好意を無にする可能性がある回答を口にするのはつらい。いたたまれない。いやたぶんそんなピンポイントなお店ないと思うけど。あと半熟卵が出てこないお店も多いと思うけど。

「じゃがいもが好きです」と答えた方が、この人変人だなぁ、と思われて別の会話に移れるからよいのかもしれない。