Really Saying Something

雑文系ブログです。

一度もモバイル端末を持ったことがない人になんとか操作を教える

昨年12月、母親(60代)に携帯電話をプレゼントした。「持たせた」に近いかもしれない。母親が通信にかかわるモバイル機器を所有・携帯するのは2013年がなんと初めて(音楽プレーヤーとしてiPod nanoは持っている)。

割とありがちな「電子機器が苦手」なタイプなので、これまでは無理に持たなくてもいいか、というスタンスだったけど、母親の方から2013年秋の旅行の経験を踏まえ、「荒天で飛行機が飛ぶか飛ばないか分からないときに、空港から連絡したいと思っても、公衆電話が前よりずっと減っていて連絡できなかった」「そろそろ持っておいた方がいいかもしれない」と申し入れがあったのだった。

これは幸いとばかりにキャリアと端末を見つくろい、自分の2台目にするということでキャリアはau、端末はガラケーを勧めることにした。auガラケー簡単ケータイも含めて4種類(2014年1月現在)。基本的な機能・操作はどれもそんなに変わらないので、ショップで眺めるのが一番いいと判断した。

auショップのお姉さんがとても親身になってくれて、無事端末をゲットできたが、その後時間の都合で本当に基本的な操作方法しか伝えられなかった。「電話をかける」「電話を切る」のたった2つ。それでも、自分の手元にある機械を扱うことそのものが初めてとなると、覚えることへのハードルはとても高い。一通り練習して、メールの類いはまた別途追々、ということでその時は別れた。

それから半月ほどして、「電話の操作方法をまた教えてほしい」と依頼がきた。なんでも取扱説明書を読みながら試したもののさっぱり分からなかったそうで、そりゃまああの分厚い説明書じゃ……。という訳で日程を調整して、ひとまず「アドレス帳に登録した人に電話をかける」「メールを見る」に目的を絞ってレクチャーすることにした。

自分なりに「訳の分からない機械についてどう伝えるか」「どうやったらやったことのない操作方法を身に着けられるか」について考えていって、50%くらいは達成した(その時は理解しても帰宅したら忘れる歩留まりの分を考えた)と思うので、その内容について自分の頭の中の整理も兼ねてまとめておこうと思う。

スマートフォンフィーチャーフォン

いったん戻って購入時の話。モバイル端末に全然触れたことのない人に対し、最初に持つものをどうするか、という点をしつこく考えた。基本的な要件は以下の2つ。

  • 手元に電話がかけられる端末があること
  • 周囲に公衆電話がないときなどに、焦らずその端末から電話がかけられるようになること

これらを考えると、ハードウェアキーボードがあるガラケーが圧倒的に有利だ。スマホではどんなにがんばっても誤タップは防げず、予想外の操作につながって、パニックになって挽回できなくなるという状況は容易に想像つく。しかし、最初からiPhoneあたりに慣れさせてしまって、後々いろいろなアプリに触れて楽しんでもらうというのも捨てがたい。ガラケーの操作はハードウェアキーボードだけなら分かりやすいが、メニューのラベリングなどがどうにも分かりづらく、言葉の面で立ちふさがりそうな気がする。

ごにょごにょ考えた挙げ句、フィーチャーフォンを選んだ。スマホの1番目のリスクは電話をかけるときの誤タップ。2番目のリスクは電池の持ち。モバイルバッテリーなどを駆使するような精神的な余裕や知識はまったくない。ならば当初の要件に戻って、モバイル端末の楽しみ云々ではなく、「電話をかける」ことだけにフォーカスしようと思った。母親にとっての習得コストはどちらも(おそらく)似たようなものだと思う。

「持っていて楽しい」経験をなるべくさせる

購入時、auガラケーのラインアップは4種類。うち1種類は簡単ケータイで、文字やボタン類が大きく、表示がくっきりしている。ラベリングも比較的分かりやすい。簡単ケータイがいいかとあたりをつけたけど、基本的にはUIよりも「毎日持っていて心地よいと思えること」を優先しようと思った。プラスの感情が持てるような小物なら、端末を持ち歩く習慣のない人でも持って歩きたくなるのではないかと。

実際にショップに行って並んでいる模型みたいなもの(デモ機ではないあれはなんというのか名前が分かりませんでした)を見てみると、残念ながら簡単ケータイはあんまり魅力的に思えなかった。なんとなくフォントやメニューがごつごつしていて、親しみとはほど遠い感じがした。一通りいじってみて、どうしても「簡単だから」という理由だけでは勧める気持ちになれず、母親には「自分が毎日持つとしてこれならかわいいとか思えるのを選んでみてほしい」と言った。幸い視力には大きな問題がないので、フォントの大きさは現時点では特に気にしなくてよさそうだった。

最終的に母親は、簡単ケータイも含む選択肢の中からK011のエレガントピンクを選んだ。ピンク色で気持ちが晴れそうだ、みたいなことを言っていた記憶がある。薄くてコンパクトなのもよかったようだった。

ガラケーの操作の基本の基本をわかってもらう

「持っていてよい感じ」を目指したものの、実際に端末を持って歩くのはかなりのプレッシャーだったようだ。そりゃそうだ、充電をした状態で忘れずに持って歩く(意識を向けておく)だけでも「今までやったことがないこと」にチャレンジしているし、何か届くけど何をどうやったら見られるのかわからない(メールのこと)状況はストレスだ。

毎日ちょっとずつ教えるという環境ではないのが申し訳ないのだけど、操作方法を教えてほしいという依頼が来たくらい意欲があるうちに、なるべく「端末は友達、こわくない」くらいの心境になっていてほしいと思った。

とはいえ、自分自身はモバイル端末を持ち始めてもう15年くらい。ガラケーを離れてからもだいぶ経っている。かつ、母親が極度の機械音痴であることを身をもって知っている。どこから何を教えれば……とガラケーの操作を思い出しながら考えていて、気づいたのが、「基本的に家電はボタンを押せばそこで操作が完了する」ということ。メニューから何かを選択して確定させるという機会は、少なくとも実家にある家電ではなかなかない。思い付く限りでは電話機にはメニュー選択は存在するが、主な設定をする役は自分で、おそらく実家を出た時点から設定を変更していない。

選択して決定、あたりを実際にやってみせて、やらせてみる、ができれば何とかなるかもなあ、とぼんやり予測した。目の前で手順を紙に書いて、端末を操作して、紙を読んでもらって、操作もしてもらう、という手順を想定していった。

操作を見せる→やってもらう→繰り返しで腑に落ちる

1ヶ月ぶりくらいに端末を実際に見てみたら、auショップからのメールと、スパムメールを処理したよというメールが20通くらい来ていた。auショップのは多少はしょうがないとしてもメール処理したメールって必要なのか……と思いつつだいたい削除。

母親に感想を聞いたところ、「どこを押したらどういう反応があるかわからない(覚えられない)」のがかなりつらい様子。ただし、紙に書いた電話番号を見てハードウェアキーボードで入力して電話をかけるということは意外と問題なくできていたようだった。「持ち歩ける公衆電話だと思え」というのはなんとか納得してもらっていた模様。

ひらがなやアルファベットの入力(まして入力切り替え、変換をするなど)はこの時点で教えて理解ができる範疇にはないので、「アドレス帳から電話をかけたい人を選んで電話をする」ことを覚えてもらうことを通じて操作を覚える、のをゴールにした。

アドレス帳入力代行をしながら、「やりたいことにフォーカスが当たっているときにボタンを押す」のを繰り返し操作を見せつつ伝える。画面下に表示されるメニューと実際のボタンの連動がなんとも説明しづらくて悩む。紙に「画面→|○○|○○|○○|」「ボタン→|××|××|××|」と並べて書き、関係性を→で指す。画面のメニューに触っても何も起きないんだよね~と言うと「そうなの」と同意が。少ないボタンで多機能を動かすにはしょうがないけど、ボタンに機能を割り振った結果ラベリングが一致しないのはとてもつらい。

選択して決定、選択して決定、で例外のような操作が出てきたとき(具体的には、アドレス帳への登録を確定するボタンが中央ではなく右に割り振られていた)に、「これは違うのはなぜか」と聞かれ、しょうがないのでもう一度対応させる別の図を書いた。そこでなんとなく母親の中でつながったようで、アドレス帳の説明が一通り終わったあと、メインメニューを出して見せて「ここでも同じ?」と聞かれた。フォーカスしているものと決定とのつながりがわかっている!!! ウォーター!!!!!!と言いたい気持ちになったのをこらえる。

ほめたたえて「このケータイでは全部同じように操作できる、選んで決定して、もし予想外のことになったら『電話を切る』ボタンやクリアボタンで戻ればよい」(大意)(もうちょっと丁寧に別の言い方にしています)と伝え、メインメニューから電卓とカメラを操作してみせたら、カメラに対していい反応になって「これで猫がいたら写真撮れる」と言っていた。スマホで写真への意欲の方を伸ばすべきだったか……と思ったけどもし写真方向に行ったらコンデジ方面に進ませればよい。

自分自身でカメラを操作して私のピースサイン付き写真を撮ったら、かなりの納得感が得られたようだったので、1回目のレクチャーはそこでおしまいになった。上記に加えて「受信したメールをひとまず開いて見る」こともできるようになった。選択して決定、でメールが開けるので。

感想

滅多に「新しい物体(ガジェット)への興味」を示さない母親が、携帯電話に関しては必要に迫られたせいか意欲が持続しているので、なんとか「メールを楽しく書く」くらいまでは習得できるといいな、と思いながらあれこれ試してみた。

メールそのものの説明も少しだけして、「住所がないと手紙を受け取れないように、メールを受け取るためのメールアドレスというものがある(ということをもう少しやわらかく)」という説明を大変久しぶりにした。しかし住所の例えは今でもばっちり有効で、「ではこの文字列が自分のものだと言えばよいのだ」という飲み込み方をきちんとしていた。

人から教えてもらう場合は、「@」っていう記号の前後のごにょごにょをとりあえず教わって、次回私がアドレス帳に入力する、なんなら自分の文字列を先に教えて「わからないけど娘にこう言われた」と言ってもらってもよい、といったところ、住所の例えでそれも通じたようだった。

auにおけるSMSの「Cメール」は最初から説明を捨てた(ということも一応説明した)。自分とだけやりとりするならCメールが圧倒的に有効だけど、他の人とSMSやら何やらやっかいな概念のやりとりをする機会をなるべく減らす意味で、Eメールに絞った。メールを開くことすら大変だった人に、「メールには2種類あって」なんてことをメニュー見せてわかってもらえる自信はない。自分からもEメールでだけ連絡するようにしようと思った。

ただ電話がかけられてメールがやりとりできればいいだけの端末がなんでこんなに複雑なんだ!という、かなりよくある疑問がどうにも消えなかったけど、カメラが使えて喜んでいるのを見ると、一応いろいろあってよかった、という気にはなる。

第2回は「メールを書く」(裏テーマ設定:ガラケー打ちをわかってもらう)になりそうな予感。久しぶりに操作したら記号や数字の切り替えを結構忘れているので、モックを触りにお店に通わないといけない。