Really Saying Something

雑文系ブログです。

「半分、青い。」をまあまあ楽しく見られたのはなぜだったのか

9/29、2018年上半期の連続テレビ小説半分、青い。」が最終回を迎えました。

www.nhk.or.jp

Twitterではハッシュタグが割れたりアンチタグができたりと大荒れでしたが、私は概ね楽しく見ることができました。Facebookでつながっている方が「あまちゃん」以降の朝ドラ10作をランキング付けすると?という話題を書いていて、当時の私の回答を引っ張り出すのはFacebookの仕様上大変なのですが、9/29時点ではこんな感じになりました。

  1. ひよっこ(2017前、東京制作)有村架純
  2. あさが来た(2015後、大阪制作)波瑠
  3. マッサン(2014後、大阪制作)玉山鉄二/シャーロット・ケイト・フォックス
  4. ごちそうさん(2013後、大阪制作)杏
  5. べっぴんさん(2016後、大阪制作)芳根京子
  6. 半分、青い。(2018前、東京制作)永野芽郁
  7. とと姉ちゃん(2016前、東京制作)高畑充希
  8. わろてんか(2017後、大阪制作)葵わかな
  9. 花子とアン(2014前、東京制作)吉高由里子
  10. まれ(2015前、東京制作)土屋太鳳

最初は5位だったんですが、最終週のみあんまり好きじゃなくて6位へランクダウン。

それでも、世間の不評ぶりよりははるかに楽しんでいたと思うので、なぜ「まあまあ」楽しく見ていたのか考えてみたくなりました。実際には先週(最終週の前)に書きたかったんですがやはり最終週だけはどうも……。

楽しく見られた要因

よくも悪くも「北川悦吏子脚本のドラマ」に慣れていた

Wikipediaを見ていると、ある一定の時期だけ北川悦吏子さんが脚本を担当したドラマをかなり見通しています。たぶん一番ドラマを見る時間があった時代です。

特にロンバケは今でも「連ドラで一番好きな作品は何か」という問いに対してはロンバケだと即答できるくらい好きなドラマでした。木村拓哉もよかったけど、あれは山口智子が素晴らしかったと思うんですよね。「愛していると言ってくれ」は「半分、青い。」にも出演した豊川悦司さんが色っぽくてなあ……。逆に、それ以降のドラマで「ビューティフルライフ」(2000年)、「空から降る一億の星」(2002年)、「オレンジデイズ」(2004年)、「素直になれなくて」(2010年)は途中まで見たものの脱落しています。こうやってみると意外と障害者を取り扱うドラマがもともと多かったんですね。

半分、青い。」の感想にも多発した「突然時間が飛ぶ」「伏線が生かされない、むしろ放りっぱなし」「あのエピソードはどうなったの」あたりは、割とこれらの連続ドラマでも多発しています。まあドラマだしな。とはいえ、1クールで終わる1時間ドラマと、半年ほぼ毎日見る15分ドラマでは、雑さ・粗さはどうしても目立つなぁとは感じました。1時間ドラマだとジェットコースター展開でもその回だけでなんとかできるもんね。

よくも悪くも「もっと適当な朝ドラ」を見たことがあった

カーネーション」→「梅ちゃん先生」→「純と愛」からの「あまちゃん」で、すごいドラマとそうでもないドラマのコントラストが激しい時期を経て、Twitterの普及と「あまちゃん」の伏線回収能力の高さから、「朝ドラウォッチ」習慣が朝ドラ視聴民に生まれた、というムーブメントを感じています。

カーネーションはリアルタイム視聴していなかったのですが(その前もかなり見ていない期間が長かった)、再放送を見てやはり名作だなと思いましたし、「梅ちゃん先生」は久しぶりに見るかーと思ったらつまらなさすぎて(すみません)完全に脱落、問題作と名高い「純と愛」は全部見てなくて「プープーテレビ:1分で振り返る朝ドラ『純と愛』 - デイリーポータルZ」で全容を知る始末。「あまちゃん」はあまりの評価の高さに途中から見始めて、めっちゃ好きになって視聴習慣が復活しました。

それより前の朝ドラだと「芋たこなんきん」「ちりとてちん」「ゲゲゲの女房」あたりは名作という評判を聞いてはいましたが未視聴。個人的にその前の最後の名作は「てるてる家族」(2003後、大阪制作)かなと思っています。

その前にもちらほら朝ドラを見ていて、近年の「ドラマを分析して共有する」という風習ができる前に、もっとすっとんきょうなドラマが結構あったなと感じます。例えば、

  • ひらり:姉妹で一人の男性の恋敵となる。地味なお姉ちゃんが強引に奪い取って恋人にするも、他の男性に心変わり。ヒロインは想い人と結ばれる
  • ぴあの:いくらなんでもヒロインの名前が「ぴあの」ってどうなの
  • 春よ、来い:ストーリーは普通(?)だったけど突然のヒロイン役交代。どうも「脚本家の自伝的作品」は地雷なのではないかというイメージの発端
  • ふたりっ子:作品は好きです。朝ドラ史上初の離婚するヒロイン、性格が悪くて京大卒なのに理容院のおかみさんに収まったことにコンプレックスを抱くヒロイン、など、なんかいろいろ斬新だった。あとお父ちゃんが失踪する系だった(舞台出演のため)
  • あぐり:作品は好きです。実在の人物のドラマを下敷きにしているが、ヒロインの夫が本当にすっとんきょうな生き方をしていたがためにすっとんきょうな流れになっているドラマ。ヒロインの夫、冷静に見ると壮絶にクズでダメなんだけど、めちゃくちゃ格好良くて助命嘆願がNHKに集まった
  • 私の青空:作品は好きです、というかかなりよかった。これまたヒロインの相手役(結婚には至らなかった)がクズでダメな上に、ヒロインもかなりやばい性格になっており、ヒロインに正論をぶつける人の好感度が上がった
  • オードリー:「脚本家の自伝的作品」は地雷なのではないか第2回。隣の家の人が突然子どもに自分で名前付けた挙げ句、父親がなぜかその名前ではなくて「オードリー」って呼ぶのいったいなんなん……しかもその隣の家の人が超絶自分勝手だし……父ちゃん突然死ぬし……ヒロイン関係ないやん……と途方に暮れた。あと長嶋一茂が起用された理由が完全によくわからない
  • まんてん:宇宙飛行士になったヒロインが宇宙から天気予報を伝えるシーンで最終回。「ドクターX」の宇宙遊泳に匹敵する謎シーン。天気予報ってその土地土地にとって意味があるものじゃなかったの……という疑問を持ちながら見終わった。本編は面白かった

この辺の自由奔放さ(?)に比べると、「半分、青い。」は割とストレートというか、夢に向かって頑張ったけど挫折してつらい時期があって別のことにチャレンジしてうまくいってよかったね、という王道を進んでいるような気がします。

割と主人公・鈴愛が好きだった

自分勝手だ、周りを振り回してばかりだ、という評判のヒロイン鈴愛でしたが、上記の理由により個人的にはそんなに自分勝手には見えないため、そこそこよくある猪突猛進系ヒロインかな?という感じでした。どちらかというと「あまちゃん」のアキの方がなんでやりたいことそんなにころころ変わるの?なんで周囲は許すの?って思ってた。特に芸能界辞めるあたり。母親が突っ込んでたけど。実は猪突猛進ではなく、結婚相手との生活では極貧ながらも夫を支える、食べていくために屋台を引く、などなど、自分にない「たくましさ」「したたかさ」があるのがいいなと思っていました。あとは演じた永野芽郁さんの演技力で支えられたなぁというのが大きいかもしれません。漫画家を辞める直前の狂気の演技、素晴らしかったと思います。

律はかっこよかったけど「なんでもできるスーパーマン」から「実はそんなにできる方じゃない」の落差についてもう少し深掘りしてくれたらさらによかったのにな、と感じました。あとは皆さん言ってる通りより子さんと翼くんが不憫。サブの主役なんだからもう少し描け。あと弥一さんほったらかしにすな。

オープニングがよかった

あのオープニングは「あまちゃん」以来のわくわく感がありました。毎朝楽しみでした。「萩尾律」の固定位置がめっちゃ好き。しかしあそこに登場する鈴愛はいつの時代の鈴愛を指していたのか、最後までわかりませんでした。ああいうアイデアをぽこぽこ出すところももう少し描いてほしかったな、と思います。主題歌「アイデア」のMV最高でした。


微妙だった要因

時間飛びすぎ

朝ドラに「ヒロインの半生を描く」タイプのものが多い以上、ある程度どこかで時間を飛ばす必要があるんですが、「半分、青い。」に限らず、若い時期に偏りすぎてませんか……? 実在の人物をモデルにした「あさが来た」「べっぴんさん」もそこまで若い頃の話要らなくて、むしろ仕事してるところを描いてほしいなーと思って見ていました。主役俳優が若いから、っていうなら次の「まんぷく」の安藤サクラさんや、「カーネーション」で女学生から60歳まで演じた尾野真千子さんみたいなタイプを増やしてほしいなぁと思います。若い女優の登竜門の位置付けを崩したくないのだと思いますが、最近は「若手抜擢」よりも「もう既に実力がある人」の方が多いし……。

夏虫駅のプロポーズの件、当人同士はもう決着ついたみたいだけど、私は律の言動を許しておらん。お前から「距離を置く」って決めたんじゃねーか。

登場人物多すぎ

ちゅらさん」あたりから顕著な気がするんですが、ちょい役でいい感じの人を出してストーリー上放りっぱなしにするので、「あの人は何のためにいたんだ」という気持ちになる。「半分、青い。」のこばやんやユーコの旦那さんはうまく持っていったなと思う反面、追加キャスト扱いだった健人の濃い目キャラはいったい……という気がするし、登場シーンの少なさの割にはインパクトのあったより子さんだってもうちょっと扱ってやれや、という感じが否めない。翼くんとカンちゃんはいつか再会するんじゃないかと思ってたけどそれもなかったなー。

時系列わからなさすぎ

「今はいったいいつ?」というのがあんまりよくわからんかった。テロップ表示がちょいちょいあるので「そうか、今はこの辺か」と目星は付くんですが、例えば最終回の1回前、仙台から帰ってきたであろう鈴愛がかつてユーコ・ボクテと過ごした場所でたたずむところ、東京に戻る新幹線の車中くらい一発はさめば「東京だ」ってわかると思うんですが、非常にわかりづらかったです。そもそも(Twitterでもツッコミありましたが)鈴愛が仙台に行けたのはいったい何月だったのか。行くこと自体はできたと思うのでそこは別に問題ないんですが、311直後ではなさそう?でも簡易的なお葬式は終わってそう?つまり10日くらいは経ってる?とか脳内補完するしかなく、「ここでワンシーン・せりふ1行足せばうまくごまかせるのに!」みたいなところがすごく多かったなーと思います。東日本大震災の後に、弥一さんから律に心配の電話が入るとか。結局一度も登場せずに終わったカンちゃんのスケートの話では、鈴愛が地味ながらも衣装を縫うシーンとか。

そもそも近現代を朝ドラにするのめちゃくちゃ難しいなと思った

自分のtweetをはります。



東日本大震災の場合でいえば、地震津波原発事故、と大きいものだけで相当ありますし、放射線ホットスポット、移住、被災地の復興などなど、メイントピックになりそうなものがめちゃくちゃあります。もちろん限られたドラマの中でメインストーリーではない震災については、あくまでも「主人公の目を通した出来事」しか表現できません。真田丸が真田家から見た戦国時代を描いたみたいに。かといって「描くな」というのはちょっと乱暴かなと思っていて、ユーコの死が本当にヒロインにとってインパクトのあるものであれば震災を描くでも全然問題ないと思っていました。細かいところは脳内でやはり突っ込まざるを得ませんでした(あんなにクリアな音で録音できるのか、津波があったとしてケータイ本体がぶっこわれてもメモリーカードだけ無事というのはあり得るのか、などなど)し、最終週よりもう1週前に持ってこいよ!ラスト15分駆け足すぎるだろ!という感じがありましたが、まあそこはドラマ側にお任せなところなので……。

ヒロインが生まれた1971年から今までは「自分の記憶」を持つ視聴者がとても多いので、「こんなんじゃなかった」「いやこれはあった」みたいなオレオレ時代考証がどうしても発生すると思います。実際、自分も「あの時そういえばこうだった」「でもさすがにシーナ&ロケッツは知らなかった、ラジオでは流れてたかもしれない」とか、自分の体験に引き寄せて考えることが結構多かった。それはそれで楽しいですし、ジュリアナっぽいところに飛び込んでいった鈴愛がお立ち台で踊るシーンではスタイルが良すぎて「今の若い人の体型だと、あの服着こなせちゃうんだ……」とショックでしたし。

日本全国災害が避け切れない特性があるので、ある程度長いスパンのドラマであれば大きめの事故・災害については思い切ってカットしないと、そこだけクローズアップしてもね、という感じになりかねない。しかし、当事者は「あの時こんなに大きい出来事があったのになんで触れないんだ」と思わざるを得ない。となると、歴史になりつつある関東大震災第二次世界大戦くらいまでしかやりようがないのかな、という気がしました。

とはいってもだいたい面白かった

北川悦吏子さんのTwitterは見ないようにしていたので、単純にドラマ+ハッシュタグだけで楽しめました。作者が後出しするのを見るのはあんまり得意ではないので、避けておいて正解だったと思います。もし見ていたら途中で脱落していたんだろうなと思います。人はそんなに簡単に成長しない、いつまでたっても前進しないこともある、でもそういう生き方だっていいじゃん?ありじゃん?というのがこのドラマから得たことかなという気がします。オリジナル作品だったのもよかった。モデルがあるものだと、ついついいろいろ調べてしまうので(花子とアン、マッサンあたりはかなりいろいろ周辺情報を探してしまった)。正直「くらもちふさこさんの作品をそのまま持ってきて別の人格に描かせる」っていうのだけは、「うーん」と思ってましたが、秋風羽織というキャラクターはその懸念を飛び越えて「この人ならこういうものを描きそうだ」と思わせてくれました。これは豊川悦司さんがうまかったんだろうなー。

次は「まんぷく」です。「てるてる家族」でも少し描かれた安藤百福さんの人生がモデルなので、またいろいろ調べる日々が始まりそうです。「半分、青い。」を完走した皆さまお疲れ様でした。