Really Saying Something

雑文系ブログです。

(ほぼ)生まれて初めて、自分の好みで自分のために自分が納得した腕時計を買った話

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就職したばかりの頃、ぎゅうぎゅうの東海道線に揺られ、新橋で乗り換えて少し暗い通路をたくさんのサラリーマンと一緒に早歩きし、銀座線に乗り換えて溜池山王まで通っていました。今でこそリニューアルが計画されていますが、当時の銀座線ホームは暗くて狭く、朝の通勤時間のピークタイムにはホームに乗客があふれんばかり、夜は飲み屋帰りのサラリーマンがふらふらしている、そんな感じの環境だったように思います。

仕事を少しずつ覚えて面白くなったり、セクハラに遭ったり、微妙な先輩のふがいなさに怒ったり、とても有能な先輩の姿を見て無力感に襲われたり、当時は毎日いろいろな感情を抱えながら銀座線のホームに立っていたように思います。そのホームで、きれいな女性が大きく力強く写された女性向けの腕時計の広告を眺めていました。

女性向けの雑誌を見てはおしゃれな格好は自分には似合わないしそんな格好をする資格もない、まして装飾品なんてとんでもない、自分とは縁遠いどころか縁のないものだ……と思っていた20代前半の私にとって、その広告だって縁のないもののはずでした。でもなぜか、ある一瞬、「ああ、この時計かっこいいな、ちょっとがんばって買ってみるのもいいのかもしれないな」という気持ちが不意によぎったのです。それくらいその広告に出ていた女性はきれいで、かっこよかった。

◇ ◇

それから15年以上の歳月が流れました。最初に転職したときに同僚たちからプレゼントされた腕時計、当時交際中だった夫からもらった腕時計、行きがかり上入手したちょっと高級な腕時計、いろいろな時計をつけてはいましたが、自分で選んで買ったものはありませんでした。そんなときになぜか15年以上前に見た広告を思い出したのです。特に理由もなく。

当時インターネットは普及しかかっているくらいの時期だったので、企業情報やCMの情報などがWebページとして残っているとは思えませんでした。それでもなんとかうすぼんやりとした記憶をもとに、ヨドバシカメラに出かけ、せっかく思い出したのだから自分で自分の欲しい時計を買ってみよう、ちょっと高くてもいいや……と、セイコーLUKIAルキア)とシチズンのxC(クロスシー)のコーナーへ。いくつかデザインが好きなものを出してもらって腕につけてみたり、鏡に映してみたり。自分が自分の好みのものを意識的に探すという体験がほとんど初めてであったため、かなり緊張したし、本当にこれでいいのか?こっちじゃだめなのか?など何度も迷いました。

最終的にはそれまで持っているものとは少し路線の違う色のクロスシー、でもちゃんと自分で気に入って納得したものを購入。そのときに頭の中にあったのは、なんとなく女優の篠原涼子さんでした。

◇ ◇ ◇

時計の箱を大事に持って帰りながら、髪が長くてかっこいい感じの女性……確か篠原涼子さんだったような……と、再度うすぼんやりした記憶を巡らせつつ、帰宅してからネットで検索して答え合わせ。そしたら、篠原涼子さんはなんとクロスシーの広告にちゃんと出ていたのです。すごい。イメージにぴったり。ただし、出演期間は「2006年10月 - 2012年9月」でした。

私が銀座線で通勤していたのは1999年~2001年くらいで、その後路線が変わってしまいました。もちろんその後に地下鉄で同じように広告を見た可能性も捨てきれないのですが、自分がどの路線でどんなふうに通勤していたか実はあんまり覚えておらず、何度思い返してもあの時計の広告は銀座線のホームだとしか思えなかったのです。

ものすごくものすごく気になってしまい、時計を買った勢いのままに、シチズンのサイトの問い合わせフォームから以下のような内容(一部改変)を送りました。今思えば、シチズンと決まったわけではなくセイコールキアだったかもしれないのに、勢いとは恐ろしいものです。

ヨドバシAkibaにてクロスシーを購入しました。大変丁寧な接客で調整も細やかにしていただき、気持ちよく購入できました。ありがとうございました。

今回クロスシーを購入するにあたり、自分が新卒で働き始めた1999年~2001年頃、営団地下鉄(当時)銀座線のホームでクロスシーの大きい広告を見ていた記憶がありました。「いつかあのような腕時計を買いたい」と強く思ったことを、ふと今年になって思い出したことがきっかけで買い求めました。

時を超えて肩を押してくれたあの広告は、確か篠原涼子さんだったような……と思い返して調べたのですが、篠原さんは2006年の登場でした。当時はインターネットもそんなには普及しておらず、まして写真をアップロードすることも一般的ではなかったため、2000年前後の広告に関する情報は見当たりませんでした。

一利用者がこのようなお願いをするのは大変心苦しく申し訳ないのですが、2000年前後にクロスシーの広告に登場されていた方について、もしお分かりでしたら教えていただけないでしょうか。個別回答は難しいかと存じますが、ご検討いただければ幸甚です。


本当にダメ元でした。何らかのテンプレート的返答があるとは思っていたのですが、そもそも商品そのものに関する問い合わせではないし、単純に記憶の答え合わせでしかなかったのです。



しかし。



その翌日に以下のような返信(一部改変)をいただきました。

お問い合わせ内容を確認させていただきながら、
とても光栄なお言葉に感謝しつつ、
toya様のような女性に愛用して戴きたい時計として
XCは誕生した事を余談ですが、お伝えさせていただきたく
ここに紹介させていただきます。
ご一読いただけましたら幸いでございます。

XCの「C」は COOL/CLEAR/CREATIVE をコンセプトに、
自分らしく生きる女性たちの感性にフィットする時計。
女性が一番輝いて過ごす時間を一緒に時を刻んでいく時計。
自然体で生き、自分のスタイルを持っている女性たちへ年齢問わず
ご愛用いただきたい時計でございます。

おそらくご覧いただいた広告は、イメージキャラクターとして当時、
日本映画やCMにも出演されていた「ケリー・チャン」さんです。
燐としたエレガントな美しさが話題となりました。

ご案内は以上でございます。
ご購入いただきました時計が、永く良き「相棒」として時を刻み
続けてくれる事を願っております。
以上、お問合せの回答とさせていただきます。


ケリー・チャンさん!そういえば! 当時、資生堂ピエヌ」のテレビCMとか、映画「冷静と情熱のあいだ」とか、露出がとても多かったような気がしています。全然篠原涼子さんじゃなかった! でも言われてみれば確かに長い黒髪!

普段、ちょっと肌触りの良い言葉や、マーケティング的な言葉遣い、狙ったふうなやさしげなフレーズに対して、ちょっと斜に構えてしまいがちなのですが、お返事の文面からは製品への愛情や誇りのようなものがひしひしと伝わってきました。後先考えずに送ってしまったけれど(もしこれで実はピント外れで、ルキアの方だったら……)、問い合わせをしてみてよかったなあ、と思ったのでした。ご返信をいただいた担当者の方にはあらためてお礼を申し上げました。

◇ ◇ ◇ ◇

私が買った限定のクロスシー、軽いし、視界の隅にちらっと入るときらきらと見えて、ちょっと気分が良くなります。買ってよかった。



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